私たちは、何気ない日常の中で「住まい」に囲まれて暮らしています。
実はその住環境における、空気・光・温度などのわずかな違いが、子どもの元気や大人のリズムにも大きく影響しているのをご存じでしょうか。
「住まい」は、家族の健やかな日常を支える1番身近な“環境”です。
前編では、絵本創造未来機構の楢葉先生をお招きし、子育ての土台作りについて語り合いました。
この後編では、お子さまの成長をサポートする住環境づくりについて、4つの重要なポイントをご紹介します。
【前半】→〈楢葉先生×ハウスファーベン スペシャルトークセッション〉
子どもの成長をサポートする住まいづくりポイント1
子どもの睡眠と学びに最適な照明とは
お子様の健やかな成長を願う親御さんにとって、日々の生活環境は非常に大切な要素だと思います。
住まいづくりにおいて、断熱性や間取り、換気などに気を配る方は多いですが、意外と見落とされがちなのが「照明」です。
実は、照明は子どもの睡眠や学習効率に深く関わっています。
1.睡眠の質は「照明の工夫」で変わる?
寝室で上を見上げたとき、まぶしい照明が目に入ることはないでしょうか。
実はこの「視界に直接光が入る配置」は、睡眠の質を下げてしまう原因にもなると言われています。
特に、寝る前40分ほどは照明の明るさを落とすのが理想的。
海外の照明文化では、「足し算」ではなく「引き算」で光を整える発想があり、やわらかい間接照明がスタンダードになっています。
2.科学的にも証明された照明と睡眠の関係
8年ほど前に発表された科学誌「Nature」の研究では、照明環境によって子どもの睡眠時間に明確な差が出ることが示されました。
その影響から、現在では主寝室に間接照明を採用する住宅も増えています。
「でも、間接照明って高いのでは?」と思われがちですが、実はちょっとした照明位置の工夫で対応可能です。
例えば、壁面に寄せて配置するだけでも、やわらかい光の演出ができます。
3.勉強するときは「明るさ」が大切
ただし、勉強中は明るい環境の方が集中しやすいのは事実。
しっかり光を当てることで、ドーパミン(やる気ホルモン)の分泌が促され、意欲的に取り組むことができると言われています。
そのため、集中したいときはスタンドライトなどを上手に活用するのがおすすめです。
また、「暗いと目が悪くなる」というイメージもありますが、実際に目に負担をかけるのは、「近くを長時間見続ける」ことが原因なので、間接照明にすることで目が悪くなるということはありません。
4.今ある住まいでもできる、照明からの環境改善
「今の家では照明の位置を変えるのは難しい」という方も、調光機能のある照明や間接光を演出する器具を取り入れることで、手軽に住環境を整えることができます。
子どもの成長をサポートする住まいづくりポイント2
家族みんなが自然と家事に参加できる暮らしの工夫
「子どもにもっと家のことを手伝ってほしい」
「夫婦で協力しながら家事をしたい」
そんなご家庭にこそおすすめしたいのが、“お手伝いしたくなる動線”のある住まいづくりです。
1.キッチンは「家族みんなの場所」に
かつての住宅設計では、「キッチン=奥さんのテリトリー」とされることも多くありました。しかし、今の家づくりにおいては、「家族全員が家事に関われる動線」が重視されています。
ポイントは…
日常的に「手伝いやすい・関われる」動線があることで、自然と家族の会話も増えていきます。
2.収納・動線の工夫が家事参加を後押し
収納の位置や出し入れのしやすさも大切です。
例えば…
こうした工夫で、“やってみようかな”が生まれるお家に。
「お手伝いが日常になる家」は、家族の関係をグっと近づけてくれます。
子どもの成長をサポートする住まいづくりポイント3
思春期こそ「つながる動線」を。これからの間取り設計
小学校高学年〜中高生になると、子どもは少しずつ親から距離を取ろうとします。
でも、本当に大切なのは「干渉しすぎず、でもつながっていられる距離感」。
そのために、住宅設計でできることがあります。
1.「顔が見える動線」は、心の距離も近づける
昔の家は、玄関を開けるとスグに廊下と階段があり、リビングを通らず2階の部屋に直行できました。
このような動線では、家族同士の接点が減り、心の距離も離れがちです。
今注目されているのは…
こうした工夫で、適度なプライバシーを保ちつつ、つながりを感じられる暮らしが生まれます。
2.思春期に「孤立させない家づくり」を
思春期は、心が揺れやすい時期。
この時期に、日常の中で自然に顔を合わせたり、言葉を交わせる環境があることは、安心感にもつながります。
子どもが自立していくためにも、「ひとりになれる場」と「家族とつながる場」のバランスが取れた動線がとても重要です。
子どもの成長をサポートする住まいづくりポイント4
子どもの集中力と健康を支える、住まいの“換気”の話
「最近、朝起きてもなんだかスッキリしない」
「子どもが勉強中、すぐに集中力が切れてしまう気がする」
そんな悩みの背景には、室内の“空気環境”が関係しているかもしれません。
1.CO₂濃度と集中力には深い関係があります
イベントで話題になったのが「CO₂(二酸化炭素)濃度」と学習効率の関係。
文部科学省のガイドラインでも、小中学校の教室ではCO₂濃度が1500ppmを超えたら換気をするよう義務付けられています。
実際、CO₂濃度が高くなると…
「室温」だけでなく、「空気の質」も学びを支える大切な要素なんです。
2.家族みんなの寝室、空気はどうなっている?
家族全員が一緒に眠る寝室では、朝起きたときのCO₂濃度が3000ppmを超えることもあります。これは「眠っていても疲れが取れない」状態を引き起こす原因のひとつです。
特に冬は窓を閉めがちですが、24時間換気システムの導入や、夜間の部分的な窓開けだけでも大きな改善が期待できます。
3.今すぐできる!空気環境を整える工夫
例えば…
空気は目に見えませんが、住環境の中で私たちの体調や気分に与える影響はとても大きいものです。
私たちは、家づくりを通して子どもたちの育ちや暮らしの質が自然と育まれる空間づくりを大切にしています。
今回のようなイベントが、そんな考え方を「楽しく学びながら」感じてもらえる機会となれば幸いです。